通常バレエとはオペラのように厳かなものになりがちです。昔話や伝説を分かり易く民衆に語りかけるようにストーリーに沿って進められるからです。
バレエ団は決められたストーリー展開をしながら自分の理想とするバレエを魅せるのを主としていました。
巷で賑わっているのが、このような従来のバレエとは異なるコミカバレエです。具体的にどのようなバレエなのかというと、笑いを随所にちりばめた、まるで寄席を見ているかのような感覚です。
このように説明すると、喜劇に近いかと質問がありますが、喜劇とも異なります。
喜劇は古典的な笑いの落としどころが決まっているので、タイミングや間はぴったりでなければなりません。あくまでバレエが本質なので、笑いは一つのスパイスに過ぎないのです。
一方で、コミカバレエはバレエと同じように笑いを追求するため、お客さんのその日の雰囲気や年齢層によって笑いの言葉を変えていきます。従来のバレエだと一度見るとよほどの物好きでなければもう一度同じ演目を見るということは滅多にありません。その後の展開が既に頭の中に入っているので、予想外の展開になることがないのです。このコミカバレエは良い意味でお客さんの期待を裏切ってくれる様々な笑いが随所にちりばめられているので、一度見た演目でも新鮮な気持ちで鑑賞できるのです。
カップルでバレエを見る場合に、片方がつまらない態度で鑑賞しているともう片方はすぐにそれが分かります。結局バレエに集中できずにひたすらもったいない時間を過ごすことになります。コミカバレエなら全く同じ笑いを提供しても、タイミングや間をずらすことによって全く異なる笑いの反映につながります。
演者の特徴として、バレエが出来るのはもちろんですが、従来のバレエだと評価されなかった笑いを誘う様な動きを誰もが一つは持っていると言うことです。このため、楽しいバレエというこれまでとは一線を博した新しいジャンルを提供することが出来るのです。バレエ団としても、技術をひたすら追求しなくて良いので、やりがいがあります。
どんなにバレエが上手な人でも、毎公演高難度の技術が求められるバレエをしていたらすぐにからだが悲鳴を上げて故障してしまいます。コミカバレエならそこまでの技術が無くてもお客さんにその分の笑いを提供することによって許されるのです。演者たちの仲が良くなり、これまで以上のバレエをお客さんに魅せることが出来るのです。
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